技術紹介

r-GeO₂ってどんな半導体?

私たちの日常生活に必要不可欠な電気機器(例えばテレビ、エアコン、自動車、産業機械等)は、電力を変換・制御することによって機能しています。この電力を効率的に変換・制御する役割を果たすのがパワー半導体です。
ルチル型二酸化ゲルマニウム(r-GeO₂)は、次世代のパワー半導体材料として注目されています。
従来の材料と比較して、r-GeO₂は電力損失を大幅に低減し、より高効率な電力変換を可能にする**「理想的なスイッチ」**としての潜在能力を秘めています。それはこの材料が優れた物性を持つからです。広い禁制帯幅(バンドギャップ)があるので高い絶縁破壊電界が期待されます。さらに、 p型、n型の両方のドーピングが可能であることが理論的に予測されています。これらのことから、二酸化ゲルマニウムは今後、多岐にわたる分野での応用が期待されており、電力利用の効率化に大きく貢献すると考えられています。製造技術の進展により、量産化への道筋も見え始めています。

r-GeO₂の基本物性表

特性 r-GeO₂(ルチル型二酸化ゲルマニウム)
バンドギャップ(eV) 4.45~4.77(実測)
絶縁破壊電界(MV/cm)
電子移動度(㎠/Vs)
正孔移動度(㎠/Vs)
熱伝導率(W/m K)
熱膨張係数(/K)
平均熱膨張率(/K)(室温~600 ℃)((001)面) 3.9×10⁻⁶(実測)*
バリガ性能指数 (Si=1)
ビッカース硬度 (Hv) ((110)面) 1610 (実測)*
ヤング率 (GPa) 293GPa(実測)*
r-GeO₂(ルチル型二酸化ゲルマニウム)の実測値はバンドギャップ (eV)25年9月7日に公開(4.45~4.77 Patentix)
                                       (4.85 ~ 5.63 論文)

*n=1です

空欄の物性値については、現在実測を進めております。開示可能になり次第更新いたします。

r-GeO₂半導体の期待されるメリット

高耐圧・低損失

高い絶縁破壊電界により、高電圧環境下でも安定動作し、電力変換時のエネルギー損失を大幅に削減。
これにより、システムの高効率化と発熱抑制に貢献します。
小型・軽量化
低損失特性は、デバイスの小型化を可能にし、最終製品の省スペース化、軽量化に直結します。
これにより、設計の自由度が向上し、新たなアプリケーションの創出を促します。
環境負荷の少ない製造プロセス
GeO₂の製造プロセスは、SiCの昇華法(2000°C超)とは異なり、成膜温度が1000度以下での製造が可能であり、高価な真空環境も不要なため、莫大な電力消費を抑え、環境に優しく製造コストの低減につながります。また、SiCほど硬くなく、酸化ガリウムのような劈開性がないため、半導体加工が容易で、デバイス製造の歩留まり向上とコスト削減に大きく貢献します。
省エネ社会への貢献

電力変換時のエネルギー損失の低減はCO₂排出量の削減に寄与し、持統可能な低炭素社会の実現に貢献します。

新たなアプリケーションへの創出
これまでの半導体では難しかった高出力・高耐圧の電力制御を可能にし、産業、交通など様々な分野で新たな技術革新を促進します。

r-GeO₂半導体の今後の課題

p型伝導の立証と制御技術の確立
理論的にはp型とn型の両方が可能とされていますが、p型伝導の実験的な立証が重要な課題として残っています。
現状、n型伝導は報告されているものの、p型伝導に関してはその可能性を示唆する電気特性が確認された段階に留まっており、両極性の完全な立証と、それを安定的に実現・制御するドーピング技術の開発が必要です。

絶縁破壊電圧と信頼性の向上
パワー半導体は高い電圧を制御するため、絶縁破壊に耐える高い信頼性が求められます。
r-GeO₂は非常に大きなバンドギャップ(4.7eV)を持つため、高い絶縁破壊電圧が期待されますが、実際にデバイスとして使用する際の絶縁破壊現象の抑制や、これに伴う物理的な破壊を防ぐ技術の確立が課題です。

成膜技術と高品質な結晶成長
半導体デバイスを作製するためには、高品質な薄膜の成膜技術や、欠陥の少ない単結晶の成長技術が不可欠です。
新しい材料であるr-GeO₂について、安定した品質で大量生産に適した独自の成膜プロセスの最適化や、基板材料との整合性を確保することが求められます。

デバイス構造の最適化と評価
材料の基礎特性が確認された後、実際にトランジスタなどのデバイス構造を設計・作製し、その電気特性を詳細に評価する必要があります。
理論的なポテンシャルを最大限に引き出すための最適なデバイス構造やプロセス技術を確立することが実用化への鍵となります。
これらの課題を克服することで、r-GeO₂はSiCやGaNといった既存のワイドバンドギャップ半導体を上回る究極の省エネルギーデバイスとして、送電や電気自動車などの分野での応用が期待されています。

r-GeO₂基板の実用化における課題

・最低でも6インチ以上の大口径基板が必要
パワーデバイスメーカでr-GeO₂基板によるパワーデバイス製造を実現するには、既存の生産設備に適合するサイズ(6インチ以上)のr-GeO₂基板を供給する必要があります。

・自立基板(バルク基板)の6インチ化は困難
6インチのr-GeO₂自立基板を実現するには、直径100mm以上の単結晶の塊(インゴット)を育成する必要がありますが、現時点で実現している単結晶は直径約5mm程度の大きさで、6インチ基板を実現するには長い開発期間が必要となります。また、原材料(ゲルマニウム)の価格高騰から、仮に6インチのr-GeO₂自立基板を実現できたとしても、基板価格を低減が難しいと予想されます。

・大口径化と低コスト化に適したGeO₂ on Si基板
安価なSi基板の上に単結晶のr-GeO₂結晶の薄膜をヘテロエピタキシャル成長することができれば、二酸化ゲルマニウム原料の使用を大幅に削減できるため、既存のSiC基板よりも安価な価格で次世代半導体r-GeO₂基板を提供することが可能となります。また、Si基板上でのr-GeO₂単結晶膜のヘテロエピタキシャル成長を実現する鍵となるバッファ層に導電性のある材料を使用することで、パワーデバイスで一般的な構造である縦型デバイス構造を容易に実現できる、GeO₂ on Si基板の実現を目指しています。

・超高性能パワーデバイス向けハーフインチr-GeO₂自立基板
r-GeO₂自立基板は、ハーフインチ(0.5インチ)サイズの実現を目標として開発を行っています。
自立基板は、大学や研究機関での基礎研究用途の他、高い結晶品質を実現できることから、超高耐圧のパワーデバイスや放射線耐性を持つパワーデバイスなど、これまでの材料では実現できなかった分野への適用を目指しています。

期待される応用分野


電気自動車 (EV) / 鉄道
電力変換効率の向上により、EVの航続距離延長、充電時間短縮、インバーターの小型・軽量化に貢献。鉄道車両の電力システムにも応用されます。

再生可能エネルギー
太陽光発電や風力発電のパワーコンディショナーに採用され、変換効率の最大化と送電ロス削減を実現し、クリーンエネルギーの普及を加速します。


産業機器
工場内のモーター制御、電源装置などに適用され、システム全体の省エネルギー化に貢献します。

データセンター
データセンターのサーバー電源に適用され、システム全体の省エネルギー化に貢献します。


家電製品
エアコンや冷蔵庫などのインバーターに組み込まれ、電力消費を大幅に削減。より高性能で環境に優しい家電の実現を支えます。

各種電源装置
スマートフォン充電器から産業用電源まで、あらゆる電力変換装置において、高効率化と小型化を実現し、エネルギー利用の最適化を推進します。